患者を見て

医者はカルテを じっと見るナースはパソコン画面を 見る患者はあらぬ方向を 見る私は自分を じっと見る医者は カルテで患者を知ろうとするナースは パソコン画面で患者を知ろうとする患者は 自分の病を知らない私は自分の病の 根深さを知る患者を見てほら あの人は怯えているよほら あの人は悲しんでいるよほら あの人は怒っているよだけど医者もナースも 見ていない患者の 悲しいまなざしが救いを求めるように ナー...

患者が夕焼け色に泣く

病棟の長い廊下の 突き当たりの開かない窓から 都心の景色が見える私は 開かない窓の外に見つからない夏の日を 探したベッドサイドの 開かない窓の外に見つからない夏の日を 探した秋の気配は街中を万遍のない夕焼け色に 沈ませる夏の あの海の色を消して患者たちの心が夕焼け色に 沈み込むとベッドに横たわる 時間が 増す心が揺れる時間が 増す患者たちが 夕焼け色に 泣く夕焼け色に 泣きながら私はいつまでも開か...

ガラス越しのさよなら

入院中、患者たちとよく話をした。相部屋で、年齢も同世代ということから私は、カオリさん、ユウコさん、サチコさんとよく話した。「食事は私らにとって大きなイベントよ!」とか「昼のイベント、まだ?」とかバカなことを言い合っては笑ってた。でも皆それぞれに、それぞれの事情を抱えて病棟にいる。珍しくしんみりと、カオリさんが自分の事情を話し出すと、やはり思い出すのだろう彼女は、唇を震わせて、必死で涙をこらえてた。...

涙の病棟

窓の外を 眺めては細い彼女は いつも呟いていた「人が歩いてるでもあの人と私は違うの私、病気になっちゃったから」と 涙ぐんだ明るく見える彼女は 呟いていた「何年か前までは、母の所に行ってあげられてたのに最近それも出来なくなっちゃって・・・」と 涙ぐんだそれらの言葉は 私に彼女らの 長い入院生活を告げていた病棟は 幾つもの悲しみに溢れてる大事な人への思いがまた改めて 悲しみを呼ぶ精神科病棟は涙の雨に濡...

ノンフィクションの世界

フィクションでは主役は 美しく老いることもないハッピーエンドでも そうでなくてもただ美しく 泣き醜いものは 隠蔽する花がいつでも 咲き乱れてるノンフィクションでは主役も 醜い気がつけば 老いている汗臭さや脂やうんこに まみれてる花は 一時しか咲かない目も 見えなくなる耳も 遠くなる足も 遅くなる受け入れ難い現実もフィクションのように 45分で終らない演出も編集も 音響効果もない美しい涙じゃなく汗や...