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ほぼ廃人と化した女が吐く、ネガティブ詩や散文
入院中というのは、
患者同士いろいろと話すようになる。
皆それぞれに病気の苦しみを抱えているという
「連帯感」も生まれる。

相部屋で、年齢も同世代ということから
私は、カオリさん、ユウコさん、サチコさんとよく話した。

「食事は私らにとって大きなイベントよ!」とか
「昼のイベント、まだ?」とか
バカなことを言い合っては笑ってた。

でも皆それぞれに、病気の苦しみや過酷な現実を
背負っているにも関わらず

何故か病棟にいる私たちは、いつも明るい。
あまり苦しいことは言わずに、ただ、楽しく過ごしている。

精神科病棟の刑務所並みの管理は
ええかげんにさらせー!
と叫びたくなるほどうるさいもので、他の科とはまるで違う。

なのに、私たちにとってそこは、
しばし、現実から逃れることのできる「極楽」のようで。

消灯前の夜のひととき。
私は、陽水のCDをイヤホンで聞きながら
「小さい声で歌っても良い?」と相部屋の人たちに
お許しを頂いて、歌ってた。

すると、まだ若いリエちゃんが
「ナレイさん、もっと大きな声で歌って。みんなも良いよね?」
と、まるで幼い子が、母に子守唄をせがむように言った。

♪夏が過ぎ 風あざみ
だれのあこがれにさまよう♪


私の、ちょっと遠慮がちな「少年時代」が
消灯前の病室に、柔らかく響いてた。




私の退院日が決まって
サチコさんにしきりに

ナレイさんがいなくなっちゃうの、寂しいよ・・
と言われて

そう思ってくれるだけで、嬉しいよ
と私は言った。

でも、ここは病棟。
どんなに仲良くなっても、いずれは別れが待っている。


退院の日。

退院の手続きやら会計やらを済ませて

「じゃあ行くね。お世話になりました」
私はそう言って、一人一人と握手した。

精神科病棟は、ガラス張りになっている。
相当頑丈なガラス。

荷物を持って、そのガラスの扉を出た私を
みんなが、見送ってくれた。

ナースが肩からぶら下げている鍵の音。
見送りまで、ナースの監視付き。
私が出て行くと、いつもより無情に響く、
施錠の音。


誰も、脱走なんてしないのに。
ただ、私を見送りたい、そう思ってくれただけなのに。

ふと見ると、
ガラス一枚隔てた向こうで
カオリさんが涙ぐみながら、笑顔で手を振っている。

日頃明るいカオリさんの泣き笑いは、私の胸を熱くした。

それでも私は、何かを吹っ切るように、
何かを覚悟するように、ガラスの外へ出た。


バイバイ、カオリさん、みんな。
早く良くなって、みんなも退院するんだよ。

仲良くしてくれた3週間、本当にありがとう。

そう思いながら、私たちは
ガラス一枚隔てて、さよならをした。



ガラス越しのさよならは
いつも悲しい。



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【2019/08/30 00:03】 | 「軽い変態」から見る社会
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