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ほぼ廃人と化した女が吐く、ネガティブ詩や散文
真坂動物病院に入職して
もうすぐ1年になろうとしていた頃、
私は、ここを辞めたい、と
強く思うようになった。

だけど、テツたちを残して辞められない・・・
そんな迷いの中にいた。

院内犬として放置され、愛情に飢え、
鳴くことも忘れたこの子たちが
健康になって行く姿は、
私にはたまらなく嬉しかったけれど、

私がいなくなれば、また放置される。


そんな迷いの中で、
私は、連休を利用して、
モモを家に連れて行くことを思い立った。

モモには、院長にとって邪魔なだけの存在で
「ナレイさん、モモさ、コロしちゃってよ」
と、よく言われていた。

いらないなら、何のために引き取ったの?
私は内心激しく怒っていた。

そこで、モモをいっとき家に連れて行ったのだった。

モモは先ず、当時健在だった母を見るなり
激しく吠えた。
しかし、私から事情を聞いていた母は、
吠えられながら、涙ぐんでいた。


4年ぶりの普通のおうち。
モモはソファの上に、お気に入りのタオルを敷いて
その上に座り、呆けたようなうっとりとした表情で
部屋中を見回していた。

私がトイレに立つと、トイレまで着いて来て
台所に立つと、台所に着いて来た。

それでも、明るく暖かな普通のおうちに
モモは喜び以上の、快感さえ感じているようだった。

しかし、いくら綺麗になったと言っても
匂いは強烈だった。
けれど私はもう、その匂いも気にならなくなっていた。

母が、歯肉炎、歯根炎のモモのために
野菜や肉を細かく刻んで煮込み、
「ごちそう」を作ってくれた。

痛みがあるのだろう、モモはいつも
餌を食べるのに1時間くらいかけ、
餌入れの周りに敷いたチラシの上いっぱいに餌を広げて
それでも、残すことなく食べた。

モモは、どんな劣悪な環境の中にあっても
生きようとして来たのだと実感した。



明るく暖かな、普通のおうちでの時間は、
あっという間に過ぎ去った。

仕事に戻るには、モモを連れて帰らねばならない。
それでも私は、モモをキャリーバッグに入れて
「お邪魔しました。ごちそうさまでした」と
母に向かって言うと、
母はまた、涙ぐんで、私たちを見送ってくれた。

(次回につづく)

↓(これまでのお話)
悲しき実験犬・第1話

悲しき実験犬・第2話

悲しき実験犬・第3話

悲しき実験犬・第4話

悲しき実験犬・第5話







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FC2blog テーマ:エッセイ・散文 - ジャンル:小説・文学

【2016/03/02 08:04】 | 愛しきイヌネコ
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