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ほぼ廃人と化した女が吐く、ネガティブ詩や散文
私が、真坂動物病院に入職して、
どれくらい経った頃だろう。

これまで物音一つ立てなかった
モモやテツたちが、

私が犬舎に入ると途端に
よく吠えるようになった。

私が来れば、ゲージから出られる、と
学習したのだろう。
みんなよく吠えた。

ゲージから出してやると
テツは嬉しそうに、私の周りをぐるぐると周り、
白い毛が生えて、
やっとマルチーズらしくなったモモは
私に抱っこをせがんだ。

私は常にモモをサマーカットにして短くし、
口吻(こうふん・犬の鼻づらのこと)だけは、
膿が出るので丸刈りにしておくようにした。
このときだけは、自分がトリマーで良かった
そう思えた。

この子たちが吠えることを、中野先生やトモ子さんは
「ナレイさんが来てから、あいつらが我が儘になった」
と、私を責めるように言っていたが、

私は
(我が儘になって何がいけないの?
やっと我が儘になれたんじゃない?
やっと吠えられるようになったんじゃない?)
と、心の中で小さな怒りの炎を燃やした。

むしろ私には不思議でならなかった。
中野先生たちはなぜ、
あの子たちを放置しておけるのか、
愛情は湧かないのか、
ここの院内犬や院内猫たちの扱いの酷さを
考えたりはしないのか、と。

クロは、あのゲージで2匹の子犬を産んだが、
子犬たちを食べてしまった、と聞いた。

犬は、子犬を産んでも、
天敵から子犬を守るために、
或いは、過度なストレスがかかると
母犬が子犬を食べてしまうことがある。

まさに、クロは、
院長も、中野先生も、トモ子さんも
「天敵」と思ったのかも知れない。

なのに、中野先生たちは、
「こいつは異常だ」と、忌々しそうに
いつも言っていた。

違う。
異常なのは、中野先生たちのほうよ!
私はいつも、心の中でそう叫んだ。


そして私は、次の作戦に移った。
あの子たちが普段食べていたエサは、
安いドライフードをふやかしたものだった。
私は家から、炒めた豚肉とか、お菓子とか
美味しい物を沢山持って行った。

そして病院を開ける3時間ほど前に病院に行き、
明るい診察室を自由に歩き回れるように
犬舎のドアを開け放して、テツたちのゲージを開けた。

テツたちは転がるように飛び出して来て、
大喜びで、診察室中を走り回った。

お前たちは、何年ぶりにそうやって走っているの?
どんどん走りな、どんどん暴れな、と思った。
そして美味しい物をあげると
テツたちは、皆、我れ先にと私に飛びつき、
がつがつと食べた。


束の間のこの子たちの、自由な、明るい部屋。
ちぎれんばかりに尻尾を振る、テツやクロ。


私自身も、嬉しくてならなかった。
同時に、自分の無力をも痛感していた。

(次回につづく)

↓(これまでのお話)
悲しき実験犬・第1話

悲しき実験犬・第2話







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FC2blog テーマ:エッセイ・散文 - ジャンル:小説・文学

【2016/02/12 01:48】 | 愛しきイヌネコ
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