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ほぼ廃人と化した女が吐く、ネガティブ詩や散文
動物病院での仕事には、すぐに慣れた。

当時はまだ、発病もしていなかったし、
先輩のトモ子さんは、私と同い年。
あとは、院長と代診の中野先生の
4人だけだったから。


しかし、放置されているモモや
交通事故で、
余りに酷い体つきになっている
テツたちに対しての、悲しみは
日々、深まって行った。

そして、いつの頃からか、
その悲しみは、愛情となった。


私は密かに、小さな作戦を立てた。

オーナーの犬や猫が混雑しているとき以外は
わざと、犬舎掃除に時間を長く取って、
丹念に掃除していると見せかけて

テツやクロやモモを、少しでも長い時間
ゲージから出して自由にさせる時間を作った。
と言っても、湿った犬舎の中だけだったけど。

それでもテツたちは、あちこち歩いて
匂いを嗅ぎまわって、私の顔を舐めたりして
甘えて来るようになった。


モモは、カルテを見ると4年間、
普通に飼われていた。
強烈な匂いを放つ、慢性の歯肉炎や歯根炎
これでは飼えないと、飼い主が置き去りにしたのだった。
そして、この病院でモモはステロイド漬けにされていた。

モモはゲージの中だけでその後の4年間、生きていて
うんちやおしっこで汚れたゲージを掃除するとき
隣りにある、ステンレス製の仕切りを開けると、
黙って、隣の綺麗なゲージに歩いて移る。


そんな学習をしているモモが、悲しかった。

綺麗にしても、ステンレスは冷たい。
せめても、とタオルを敷いてやると、暖かかったのだろう、
4年ぶりのタオルを、モモはとても気に入った様子だった。

引き取った病院側も、大した治療もせず
放置されていた。
どんなに痛かったろうに、
それでもモモは、吠えることも何もせずにいた。

私は先ず、モモの
この膿だらけの体を何とかしようと、
丸刈りにして、シャンプーをした。

しかし、ぬるぬるするだけで、
一向に泡が立たない。

モモの体は、放置の時間を物語っていた。

それでも私は、
モモの毛が生えて来ると
丸刈りにしてはシャンプーし、
丸刈りにしてはシャンプーし、
を、何度も何度も繰り返した。

また、モモの治療を
代診の中野先生に頼み込んで、
ルゴールを口腔内に塗ってもらったりした。
ルゴールとは、今で言うイソジンのようなもので
それを塗るだけでも、匂いは和らいだ。


何ヶ月、何回、モモの丸刈りとシャンプーを
繰り返しただろう。
いつの頃からか、モモの体から真っ白な毛が
生えて来るようになった。

驚くほど匂いも和らいだ。

そしてモモは、人に甘えることを
思い出したかのように、
しゃがんで、バケツを洗ったりしている私の膝に
無理矢理、乗って来るようにもなった。

白い毛が生えるまで、長い月日を費やした
モモの体は、本当に、長い長い放置の時間を
物語っていた。

私には、臭くても、汚れていても、
どんな病気でも、
モモが愛しくて、たまらなくなって行った。

この子たちは、院内犬というより、
実験犬、放置犬 だった。

(次回にづつく)

↓これまでのお話

悲しき実験犬・第1話








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【2016/02/11 07:49】 | 愛しきイヌネコ
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